ブックタイトル会報2020年9月

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概要

会報2020年9月

Page 2 第207号 令和2年9月発行臨床糖尿病支援ネットワーク基礎から学ぶ生活習慣病アプローチ運動療法編[当法人評議員]東京医科大学八王子医療センター天川 淑宏 [理学療法士]特別企画糖尿病レクチャーシリーズ糖尿病診療ガイドライン2019における運動療法では、CQ4-1 糖尿病の管理に運動療法は有効か? CQ4-2 運動療法を開始する前に医学的評価(メディカルチェック)は必要か? CQ4-3具体的な運動療法はどのように行うか?の3項目が示され、そのステートメントが述べられている。また、食事療法におけるQ3-3総エネルギー量をどのように定めるか?では、<身体活動レベルと病態におけるエネルギー係数(kcal/kg)>が3つの労作レベルとして示されている。この労作とは身体活動であり、その見極めと評価は、正に運動療法の基本であるといえる。身体活動を評価する方法として当科では、加速度センサー搭載の活動量計を患者へ貸し出し測定を実施している。身体活動の3つの労作をMetsへ換算すると軽い労作2.17~2.33 Mets、普通の労作2.33~2.58 Mets、重い労作2.58Mets~となることより、1日あたりの歩数とMetsより、非監視下における3つの労作レベルの見極とエネルギー摂取の適正量へのデータとしている。なお、運動療法プログラムは主治医の運動指示より患者個々の生活背景と運動思考を聞き取り、食事療法と薬物療法の情報および上記活動計のデータをもとに個別作成と指導を行っている。糖尿病診療ガイドラインでは、主に有酸素運動とレジスタンス運動が示されている。また、整形外科的治療には至らずとも運動器疾患を抱えている糖尿病患者も多く、その対策としてストレッチングが有用である。このストレッチングは上記の2つの運動と共に3つの運動要素として重要である。なお、患者指導では、ストレッチングは「動きやすい体と糖を活用しやすい筋肉づくり」、レジスタンス運動は「動ける体と糖を活用する筋肉づくり」、有酸素運動は「GLUT4の増殖とインスリン感受性を高める筋肉づくり」と運動要素の目的と糖尿病治療への関係を伝え実践方法を指導している。ストレッチングを有酸素運動やレジスタンス運動の後にルーティーンにしている患者の運動継続率は高い。また、運動療法導入期の運動として就寝前のストレッチングは、実践率も高く身体活動量の増加へつながる例も数多く経験している。また、糖化(グリケーション)は、糖尿病患者に特有ではないが、臨床的経験から筋肉を取り巻く筋膜の糖化が高血糖により生じやすく筋活動への弊害が生じやすいのではないかと捉えている。腓返りや関節可動性低下の患者に対しては、外来時に筋膜リリースを施すことでストレッチングの併用が顕著な改善につながる。