ブックタイトル会報2023年1月

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概要

会報2023年1月

第235号令和5年1月発行Page 3第9回日本糖尿病医療学学会令和4年10月8日(土)~9日(日)京都大学百周年時計台記念館[当法人評議員]熊倉医院熊倉淳[医師]令和4年10月8日~9日に第9回糖尿病医療学学会(医療学の新たな幕開け)が京都大学百周年時計台記念館で開催されました。糖尿病医療学は、糖尿病をもつ人と医療者の良好な関係を基本として、医学的側面と人間的側面を考慮しながら、両者が協力して糖尿病治療と支援を行う理念と実践に関する学問です。奈良県立医科大学教授石井均先生は、症例検討を続けることで、1相手のことに深い関心を持ち、よく知りたい(聴こうとする)医療者の態度が、糖尿病をもつ人のウェルビーイング、満足感や安心感、治療意欲、生き方の選択に大きな影響を及ぼす。2相手の気持ちや感情が理解できたとき、その人の行動の意味が分かる。それが適切な支援の始まりになる。3真の理解に至るまで、医療者にとって不可解な判断や行動についての批評や反論を抑える力(不思議さや不可解に耐える力)が必要である。4相手の(真実の)語りや、相手を理解すること(医療者の想定しない状況で)突然起こることがある。それに至るまで希望と関心を持ち続けることが必要である。5慣れた、知り合いの医療者が近くにいることは闘病の支えになる。直接顔を見ることに大きな意義がある。6相手に葛藤が存在するとき、それを知ることによって医療者にも葛藤が起こる。それを共有することが共同で課題を取り組むことを可能とする。7医療者に怒る葛藤やおもいやり疲労について、それをケアするチームが必要である。というゆるやかな法則がみえてきているとの講演がありました。文教大学教授布柴靖枝先生は家族関係の心理の中で、患者の療養行動ベースになるのは家庭であり、家族は重要なリソース(強み)である。患者がどのような家族関係の中で生活しているかを把握することは糖尿病医療には必要なポイントであると講演されました。診療の中で病気のことだけでなく、本人のこと、家族背景までしっかりと把握する重要性について改めて実感しました。東京大学大学院保健社会行動学分野加藤明日香先生による糖尿病スティグマの講演では、糖尿病であることを理由に、実際に差別的な出来事を経験するexperienced stigma、差別を受けるのではないかと恐れるperceived stigma、スティグマを内在化させてしまうself stigmaに大別され、糖尿病をもつ人々の治療生活と社会生活に大きな影響を及ぼすことを示されました。シンポジウム症例では当院のCDEJ看護師福島琴美さんが「スティグマのなかを生きてきた盲導犬とともに来院した患者」を発表しました。両親からの虐待ともとれる家族の問題、医療者からのスティグマの問題、医療スタッフはどのような姿勢で患者を迎えればよいのかなど、さまざまなご意見をいただくことができました。また前述の布柴先生の“家族関係の心理”、加藤先生の“糖尿病スティグマ”の講演を聞いたことで、本症例をより深く理解することができました。患者に寄り添う治療について勉強したい方は、糖尿病医療学に参加されることをお勧めします。読んで単位を獲得しよう答え3下記の解説をよく読みましょう。(問題は1ページにあります。)解説1.〇糖尿病の疑いがある場合は現病歴、既往歴、家族歴をとることは大切。2.〇2型糖尿病患者は糖尿病診断時にすでに網膜症を発症していることもあるため、眼底検査を行うことが望ましい。3.×随時血糖200mg/d?以上、HbA1c6.5%以上であれば「糖尿病型」と判定され、同日に測定した結果がともに「糖尿病型」であれば「糖尿病」と診断できるため実施はしない。むしろブドウ糖負荷にてさらなる高血糖のリスクとなる。4.〇4年前に高血糖を指摘されているが放置しているということは糖尿病に対する病識もないと考えられ、高血糖を是正するためにも栄養指導を早期に受ける方が良い。5.〇糖尿病は動脈硬化性疾患の危険因子の一つであり心電図検査を実施することは重要。臨床糖尿病支援ネットワーク