ブックタイトル会報2023年6月

ページ
3/4

このページは 会報2023年6月 の電子ブックに掲載されている3ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

会報2023年6月

第240号令和5年6月発行Page 3第57回糖尿病学の進歩令和5年2月17日(金)~18日(土)東京国際フォーラム[当法人評議員]立川相互病院長谷部翼[理学療法士]令和5年2月17日(金)~18日(土)に第57回糖尿病学の進歩が東京国際フォーラムにて開催されました。現地開催されるのは実に4年振りであり、私も足を運んで参加しました。今回は、“糖尿病療養指導に必要な知識”セッションにて富田益臣先生(下北沢病院糖尿病センター/足病センター)より、「糖尿病療養指導に求められる足病の知識」を拝聴しました。下北沢病院は日本初の足と糖尿病の総合病院として設立され、専門チームによる治療を展開していますが、国内全体では足病医が少なく包括的な診療科がないためunmet medical needs(いまだに治療法が見つかっていない医療ニーズ)が課題であるとお示しされました。IWGDFにおける糖尿病足病変のガイドラインでは足の合併症予防のために必要なこととして、1糖尿病患者へのフットスクリーニング、2リスクのある足の定期的な観察、3患者・家族・医療者への教育、4適切な靴の選択・処方、実際に履いてもらう、5足潰瘍のリスク因子の治療が掲げられていますが、富田先生からはそれに加えて6傷の状態からHbA1cの数値がわかるようになる(血糖が高い患者の傷は治らないし、創部も離開、感染する)、7体重コントロール(体重増加は義足断端の不適合、足底圧上昇につながり、潰瘍悪化や再発リスクを高める)、8心疾患系のリスク管理(足だけ治療するのではなく、全身管理も必要)といった項目の重要性についてもお話しされました。またEvidenceの側面では、集約的フットケア(前潰瘍病変や胼胝・陥入爪・白癬・肥厚爪の治療、セルフケアに関する教育、適切な靴や装具の処方、アキレス腱延長術や屈筋腱切離など外科医との連携、歩行指導などの運動療法)を行うことで少なくとも75%の潰瘍再発予防が期待できるとされており、知識を伴ったフットケアと患者のアドヒアランスを向上させることで、足潰瘍を治療から予防へと優先順位を変化させていく必要性についてもお示しされました。20世紀に足病医として功績を残したPaul Brandによれば、糖尿病患者の足の切断を防ぐには「医師、看護師などの医療従事者が患者さんの靴下や靴を脱がせて、足を調べることである」と世界的にも多い糖尿病患者さんの切断予防には多職種によるスクリーニングや治療が必要であると再認識することができました。最後に、講演中にもご紹介されていた糖尿病さんへのフットスクリーニング方法として、Ipswich Touch Test(図1)をお示しします。これは触覚(防御知覚喪失の有無)を確認する検査であり、患者さんに閉眼してもらい、両側の第1、3、5趾の指の先端を1~2秒軽く触れます。2ヶ所以上で感知できない場合は感覚障害ありと判断されます。この検査は糖尿病神経障害の検査方法として代表的な5.07 Semmens-24Weinstein monofilamentを用いた触圧覚テストと同等の精度であるこ5とが示されており、特別な器具を用いらずにどなたでも簡便に評価で1 3 6きる方法です。是非、明日からの臨床で活用してください。図1 Ipswich Touch Test読んで単位を獲得しよう答え3下記の解説をよく読みましょう。(問題は1ページにあります。)解説本症例は、1型糖尿病でありインスリン自己注射は必須である。1.シックデイの食事は糖質の補給が最優先となるため、おかゆやスープやジュースなどで炭水化物を摂取させる。2.SGLT2阻害薬は脱水やケトーシスになる可能性があるのでシックデイには必ず休薬させる。3.「血糖値を下げるためのインスリン」という考え方であるが「生命維持に必要なインスリン」であることも理解させ、食事が摂れなくても基礎分泌の代わりの持効型インスリンは継続させる。4.食事量が半分程度の時には超速効型インスリンの投与量を半分にするが、本症例は食事が摂取できていないので、投与することで低血糖になる可能性がある。5.速やかに受診する方が良いが、「診察しないと命にかかわる」という表現は適切ではない。食事摂取不可能・著明な高血糖(350mg/dL以上)・尿ケトン陽性などが1日以上続く場合などには入院加療が必要となる。臨床糖尿病支援ネットワーク