ブックタイトル会報2023年9月

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概要

会報2023年9月

Page 2第243号令和5年9月発行第66回日本糖尿病学会年次学術集会令和5年5月11日(木)~13日(土)城山ホテル鹿児島他[当法人会員]八王子糖尿病内科クリニック小池真由美[看護師]第66回日本糖尿病学会年次学術集会が5月11日から13日の3日間、鹿児島にて「糖尿病学維新」というテーマで開催されました。私自身が3年ぶりの現地参加でしたが、5月8日からCOVID-19が感染症分類5類になったこともあってか、会場には多くの方がいらしていて活気が戻ってきている様に感じました。その中で、昨今話題である「糖尿病とスティグマ・アドボカシー」のシンポジウムに参加し、6名の先生方の講演を拝聴し、とても考えさせられたものがありました。糖尿病を持ちながら生活する人に対するスティグマについて、数年前から話題になっていることは皆さんご存知のことかと思いますが、これに対するアドボカシー活動を日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が2019年8月より実施しています。特定の属性に対して刻まれる負の烙印であるスティグマですが、「怠惰な生活をしているからなる」「不摂生」「だらしない」「自己管理ができない」という糖尿病に対して社会が持っているスティグマのために、糖尿病であることを周囲に隠し、そのために適切な治療の機会を失うことで重症化してしまう。それが医療費の増大や社会保障を脅かすという悪循環に陥ることから、このスティグマを減らし、糖尿病を持つ人が安心して社会生活を送ることができる様にしようというアドボカシー活動が行われています。スティグマには公的スティグマだけでなく、自己スティグマ、構造的スティグマがある様に、糖尿病に対するスティグマの中には社会が持っているスティグマだけでなく、「糖尿病である自分は何をやっても上手くいかないんだ・・・」と自分に烙印を押してしまうようなセルフスティグマの他に、医療者が患者さんに対して持っているスティグマもあります。今回のシンポジウムの中で、看護実践におけるアドボカシー活動というテーマで、山梨県立大学の米田昭子先生がご自身の臨床での経験を元にお話された内容に、私自身も襟を正された思いでした。先生は、糖尿病を持ちながら生活する人に関わる医療者の中には、「なぜ、ここまで悪くならないうちに、ちゃんとやってこなかったのか」という疑問を持ち、患者さんを責める様な思いを抱いたり、支援を行いながらもなかなか行動変容に繋がらない人を前にした時に「なぜ、こちらの助言に沿って生活の仕方を変えないのか」「ちょっと変えるだけで血糖が良くなるのに、どうして自己管理しないのか」と思ってしまうことがある。しかし、その人の生活は何十年もかけて確立されてきたものであり、その生活の中に何かを加えたり、その生活から何かを削除することは、その人にとって「ちょっと」のことではないと話されていました。日頃私たちが前にしている方達は、糖尿病患者である前に、生活者であること。病院に来ている時は糖尿病患者として見られているが、病院を一歩出れば社会生活を営んでいる一人の人であること。その人が糖尿病を持っているというだけであること。「一人ひとりにその人の生活があり、その生活の中でその人がどの様にしたら上手く糖尿病と付き合いながら生活を送ることができるか」という視点で、支援をしていくことが糖尿病を持ちながら生活する人を支援する私たちが持っているべき、大切な視点であると改めて感じました。余談ですが、人生で初めて鹿児島の地に降り立ち眼前に見た桜島は、壮大でとても迫力のあるものでした。また、黒豚や鶏刺、白くまなどご当地の物に舌鼓を打ち、温泉に入ったりと鹿児島を少しですが満喫することもできたのも、とても良い思い出になりました。しばらくオンラインだけでの学会参加が続いていたため、やはり現地に行きリアルで参加することの素晴らしさを色々な面で感じたそんな学会でした。臨床糖尿病支援ネットワーク