ブックタイトル会報2024年4月

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概要

会報2024年4月

第250号令和6年4月発行Page 1“mano a mano”とはスペイン語で“手から手へ”という意味ですインスリン治療における高齢化問題について[当法人業務執行理事]武蔵野赤十字病院杉山徹[医師]高齢者糖尿病については、もう何年も前からその問題点・注意点が話題になっており、2016年には日本糖尿病学会と日本老年病学会の合同委員会が「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を策定したりもしています。高齢者糖尿病においては、心身機能の個人差が著しく、重症低血糖も来しやすいため、患者の特徴や健康状態、年齢、認知機能、ADL、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して個別に目標を設定し、重症低血糖を起こさないことをより重視した治療が行なわれています。それでも、1型糖尿病をはじめとしたインスリン注射がどうしても必要な患者さんが認知機能低下などで自己管理ができなくなり臨床現場で困ってしまうケースがやはり増えてきていると実感します。また、最近では癌治療における免疫チェックポイント阻害薬のirAEとして高齢で劇症1型糖尿病を発症してしまうケースも複数例経験しています。そのような患者さんにおいては、ご本人の自己管理能力と他者のサポートがどれだけ得られるかによって治療方針が左右されることになります。ご本人の自己管理またはご家族の手厚い介護によってインスリンの頻回注射を継続できている患者さんもいますが、ご家族や訪問看護などの手を借りて1日1回(時には2日に1回)の注射だけかろうじて続けている患者さんもいます。老老介護状態で訪問診療を導入したもののご本人・ご家族の希望や経済的理由などで訪問診療を中止した患者さんもいます。ご家族のサポートが十分に得られず施設入所が選択される患者さんも多いですが、頻回のインスリン注射をしてくれる施設はほとんど見つからないのが現状です。病院への転院でさえも頻回のインスリン注射が必要だと受け入れてもらえないことがよくあります。最近は家族や医療者が遠隔でCGMデータやSMBGデータを共有できる血糖値管理アプリが各社から提供され、高齢者の血糖管理をサポートするツールがいくつか利用できる状況にはありますが、注射に関しては高齢者が使いやすいインスリンデバイスや注射のサポートツールなどで新しいものはあまり出てきていない印象です。現在承認申請中である週1回皮下投与のインスリン製剤(icodec)が使えるようになれば、厳格なコントロールは無理でも、かなり多くの患者さんやご家族の負担が減らせることにはなると思いますが、これで全て解決というところまでには届きません。学会・協会・企業・厚生労働省などがしっかり対策を練っていくべき問題だと思いますが、我々も高齢者の糖尿病支援において何ができるか、皆様と一緒にまだまだ考え続けていく必要があると思います。会員の皆様の情報共有の場として、当法人のウェブサイトにて「糖尿病支援の相談室」の運用を開始しております。会員であれば誰でも質問や回答を投稿できますので、このようなツールも是非ご活用いただきながら、皆で力を合わせて糖尿病患者さんやそのご家族の支援をしていきましょう。読んで単位を獲得しよう西東京糖尿病療養指導士(LCDE)は、更新のために5年間において50単位を取得する必要があります。本法人会員は、会報「MANOaMANO」の本問題及び解答を読解された事を自己研修と見做し、1年につき2単位(5年間で10単位)を獲得できます。毎月、自分の知識を見直し、日々の療養指導にお役立てください。(「問題」は、過去のLCDE認定試験に出題されたものより選出、一部改変しております。)問題運動とエネルギー代謝について正しいのはどれか、1つ選べ。(答えは4ページにあります)1.換気性閾値は血中乳酸値で測定する2.無酸素性作業閾値が高いと全身持久力が高い3.無酸素運動では脂質のみが利用される4.無酸素性作業閾値未満の運動は酸素を必要としない5.インスリン非依存性の糖取り込みは空腹時に促進される臨床糖尿病支援ネットワーク