ブックタイトル会報2024年7月

ページ
1/6

このページは 会報2024年7月 の電子ブックに掲載されている1ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

会報2024年7月

第253号令和6年7月発行Page 1“mano a mano”とはスペイン語で“手から手へ”という意味です訪問診療中の高齢者糖尿病患者の治療の実際[当法人評議員]立川相互病院宮城調司[医師]現在、日本は超高齢社会(総人口に占める割合が21%以上)となっており、高齢者糖尿病は増加の一途を辿っていて、糖尿病患者の80%以上が60歳以上である。耐糖能低下は加齢とともに進行し、空腹時血糖の上昇は1~2mg/dl/10年、ブドウ糖負荷後2時間血糖値1~16mg/dl/10年と、より上昇することが知られている。インスリン初期分泌低下や筋力低下・内臓脂肪増加に伴うインスリン抵抗性、身体活動量の低下が要因と考えられる。高齢者には特有の問題点があり、認知機能低下や、脳梗塞・心筋梗塞などの合併症を有する割合も多く、運動機能など心身機能の個人差が著しい。自律神経障害・感覚機能低下を有する場合も多く、無自覚低血糖・重症低血糖、口渇を感じにくい、などの問題点も存在する。重症低血糖は、認知機能を障害するとともに、心血管イベントのリスクともなり得る。血糖コントロールの目標を考える上で、ACCORD・ADVANCE・VADTなど重要な研究が2000年代に発表され、厳格な血糖コントロールは、大血管障害は減少できず、重症低血糖の増加、一部の研究では死亡率が増加する可能性が示唆された。米国の保険加入47万5千人中、2型糖尿病の診断をされた心血管疾患入院歴のない2万6636人を対象に平均6.2年追跡したところ、HbA1c 8%台前半まで心血管疾患発生率・死亡率には有意差なく、HbA1c低値でも増えるというU字型を示した(2012年EASDにてKaiser Permanente Center for HealthResearch発表)。養護老人施設入所相当の患者367人での解析では、ADL低下・死亡率に関してHbA1c 8.0~8.9%が最もよい、という結果であった。そういったエビデンスの蓄積を踏まえ、2016年5月20日「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」から高齢者糖尿病の血糖コントロール治療目標が発表された。患者の特徴・健康状態をカテゴリーⅠ~Ⅲに分け、重症低血糖が危惧される薬剤の使用の有無により、65歳から75歳未満、75歳以上で、それぞれ治療目標が定められている。特徴としては、低血糖を避けるということから、下限値も設けられている。今回、当方が訪問診療を担当しているあきしま相互病院において、高齢者糖尿病の治療の実際を調査した。あきしま相互病院は110床の療養型病院で、患者数の変動はあるが、常時200人前後で推移している。2020年4月1日~2021年3月31日の期間に訪問診療を受けていた65歳以上の糖尿病患者を対象とした。65歳以上は54人であった。性別は男性26人、女性28人。病型は1型0人、2型48人、ステロイド関連5人、門脈シャント1人であった。カテゴリー分類では、Ⅰが16人、Ⅱが2人、Ⅲが36人であった。血糖コントロール治療目標の達成者は54人中36人、低血糖が危惧される薬剤の使用者では19人中9人、使用なしでは35人中27人が達成していた。カテゴリーⅢ、低血糖が危惧される薬剤の使用者では13人中5人達成していた。未達成の8人中、治療下限以下が7人おり、低血糖を実際起こしていないか確認が必要と考えられた。読んで単位を獲得しよう西東京糖尿病療養指導士(LCDE)は、更新のために5年間において50単位を取得する必要があります。本法人会員は、会報「MANOaMANO」の本問題及び解答を読解された事を自己研修と見做し、1年につき2単位(5年間で10単位)を獲得できます。毎月、自分の知識を見直し、日々の療養指導にお役立てください。(「問題」は、過去のLCDE認定試験に出題されたものより選出、一部改変しております。)問題糖尿病網膜症について正しいものはどれか、2つ選べ。1.増殖前網膜症は病変が網膜内に限局している2.網膜症になると自覚症状がすぐ現れることが多い3.黄斑浮腫が合併しているとステロイドの硝子体内投与は禁忌である4.急に血糖値を下げると網膜症が急激に増悪することがある5.光凝固療法の効果は数ヵ月で現れる(答えは5ページにあります)臨床糖尿病支援ネットワーク