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会報2024年7月

Page 4第253号令和6年7月発行第67回日本糖尿病学会年次学術集会令和6年5月17日(金)~19日(日)東京国際フォーラム東京都立多摩総合医療センター佐伯浩介[医師]第67回日本糖尿病学会年次学術集会は、5月17日(金)~5月19日(日)にかけて東京・有楽町で開催されました。東京のアクセスが良い場所ということもあってか、例年よりも来場者が多く賑わっていたように感じました。また東京国際フォーラムという大会場であり、とりわけ企業展示ブースの広さ、熱の入りようには驚かされました。広い会場の移動と5月にしてはかなりの暑さだったこともあり、ブースで喉を潤された先生方も多かったのではないでしょうか…。さて、年次学術集会では特に最先端の治療や概念・ツールに触れることを楽しみに参加しているのですが、今回は大会初日に「糖尿病診療に革新をもたらす新たな概念やテクノロジー」というシンポジウムを聴講しました。内容をいくつか紹介させていただくと、CGMによる目標血糖範囲の設定におけるTITR(Time In Tight Range)の概念とその役立て方について、TIR(Time In Range)と比較した考察がありました。どのような患者さんにどちらがより有用か、という考察は明日からでも1型糖尿病患者さんの診療に役立てられそうな内容で、自身の診療の見直しに役立てようと考えています。また、非侵襲性血糖センサーについての紹介は、これまでにない程の精度を期待できるもののようであり、実用化の目度も徐々に立っているとのことでした。糖尿病に関わる人ならば誰しもが望む、血糖測定のストレス緩和に大きな希望が抱ける内容でした。その他にも画期的で機能性の高い献立アプリの紹介など、医療者・患者双方から有用な情報を聞くことができましたが、やはり一番に興味を惹かれたのはインスリンポンプの話題で、インスリン自動投与制御システム:AIDシステム(Automated Insulin Delivery system)についてでした。目標血糖値に近づくように基礎インスリン注入量を自動調整するだけでなく、さらに補正ボーラスインスリンの注入も自動で行ってくれる、「アドバンスハイブリッドクローズドループ」技術が搭載されています。この話題についてはシンポジウムでの発表だけでなく、企業ブースにおいてもミニレクチャーが複数回開催され、毎回多くの人だかりができており関心の高さがうかがえました。このシステムにより、厳格なカーボカウントができない方でも70%以上のTIRを保つ良好な血糖マネジメントが得られ、頻回の血糖測定も不要になることからQOLの上昇をほとんどの患者さんが実感しているというデータが示されておりました。さらに衝撃的であったのが、あえて食事の際のボーラスインスリン(追加インスリン)を投与せず、全てAIDシステムに委ねた…という結果です。さすがに完全に血糖上昇を抑えることはできずボーラスインスリンの完全な肩代わりはできなかったのですが、それでも食後血糖値のピークが200mg/dL台半ばで抑えられておりました!これならば厳格な管理が不要あるいは難しい1型糖尿病患者さんにおいては十分に許容できる数値と思いますし、インスリンポンプのさらなる普及が近づいていると感じました。このような最先端の技術の進歩には瞠目するばかりですが、一方で機械に委ねる部分が多くなることに対しての不安もあります。新しい技術を正しく患者さんに届けるためには、まず我々自身が学び、知識のアップデートを常に行うことが必須だと改めて感じました。年次学術集会はそのためにうってつけの機会であり、やはり現地ならではの充実感も得ることができました。今後もこのようなハイブリッド開催で多くの学ぶ機会を得られればと願っております。臨床糖尿病支援ネットワーク