新着情報

2013/05/16

地域における医療連携

地域における医療連携

厚生労働省は、癌、脳卒中、心筋梗塞と共に糖尿病の4疾患を地域における医療連携を図ることによりその疾患の予防、治療および再発などを行っていくことを指示している。

糖尿病は長い病歴の間に腎症、網膜症、神経障害などの糖尿病特有の合併症を来すと共に、心筋梗塞や脳血管障害、下肢壊疽などの動脈硬化性疾患の合併が多い疾患である。また糖尿病は現時点では完治することの無い疾患であり、血糖コントロールという対症療法を中心に治療が行われている疾患でもある。長い、多彩な合併症を有する糖尿病を一人の医師が全てを網羅して診ていくことは現実には難しい。また、増え続けている糖尿病患者は、その可能性ある人も含めると2200万人にものぼると推定されているが平成22年現在でも糖尿病の専門医は4000人を越える程度である。このために多くの糖尿病患者は地域実地医科(開業医)が治療しているが、コントロール困難、合併症精査、専門的教育指導時などは専門病院などとの医療連携が必要である。

糖尿病における医療連携のポイントは、1.中断させない連携であること、2.患者のデータの共有化の構築、3.地域における標準化の推進ができることある。このためには患者目線に立った医療連携の考え型も必要である。

糖尿病における医療連携にはさまざまな見方があるが、以下の3つの連携を考慮しなくてはならない。

1、       糖尿病専門医と地域実地医家との連携

2、       糖尿病診療内科医と眼科、循環器科など他科との連携

3、       医師とコメディカルとの連携。

 

1、       糖尿病専門医と地域実地医家との連携

この連携は糖尿病医療連携の基本であり、構築には以下の5つの課題を解決しなくてはならない。
1.推進母体 2.情報提供手段  3.役割分担化とパス 4.実地医家のスキルアップ 5.顔の見えるネットワーク


  1.推進母体

医療連携を構築したり進めたりするにはその推進母体が重要である。どのような組織や人が中心になるかで糖尿病医療連携の規模や範囲は異なってくる。

 ●医療連携室指導型 一般には、中核病院や専門病院の医療連携室などが事務局となり、地域の実地医家との間に、患者の紹介、逆紹介を中心とした医療連携(病診連携)を進めていくことが多い。この場合中核、専門病院と実地医家とは、急性期と安定期、緩解期との連携となることが多く、糖尿病に特化した連携ではないことも多い。

●専門医指導型 専門施設や中核病院の糖尿病専門医がコーディネータとして地域に開業医との間にネットワークを構築していくもので。糖尿病に関するきめ細かい連携が出来る。糖尿病治療のスキルアップなども図れる。代表的な糖尿病の医療連携システムはこの形から、地域医師会、二次医療圏と拡大していく。

●医師会指導型 糖尿病対策推進会議や厚生労働省の施策に沿った形で地域に越える糖尿病医療連携のための活動が始まっている。地域医師会が中心になることより地域全体の糖尿病ネットワークの構築が可能になる。


  2.情報提供手段

 医療連携の基本は、情報の共有化である。専門医師と実地医家が常にリアルタイムで情報を共有する手段として最も簡便なものが糖尿病手帳、糖尿病連携手帳である。糖尿病治療における情報の多くは時系列データであり、以前より表形式の糖尿病手帳が用いられていた。糖尿病協会が新たに発行した糖尿病連携手帳や、独自に作成した手帳などがあるが、専門医も実地医家も共に検査結果や治療薬など記載すると共に、治療方針や合併症情報なども記載することで患者の病態が簡単に把握できるようにすることが重要である。最近はコンピュータサーバー内のデータを時系列で打ち出し、これをファイルしていることも多い。患者自身に管理を任せることで、患者も自信のデータを常に把握できる。


  3.役割分担とパス

専門医と実地医家との連携は役割分担を明確にすることで連携関係の確認ができる。

一般的には、専門施設では、入院を中心に、高血糖昏睡や重症感染症、あるいはコントロール不良の検査、合併症精査、食事療法、運動療法の指導、インスリン導入、SMBG指導などを行い、日常診療は地域開業医が行う。しかし、地域では専門医が診療所を開業していることも多く、入院施設の有無での棲み分けになつことも多い。基本的には、地域における専門施設、専門医、実地医家とのあいだで役割を決めることが多いが、必ず明文化しなくてはならないものでもない。しかし、糖尿病連携用のパスを作ることによりそれぞれの役割分担は明確になってくる。現在各地域で行われている糖尿病の医療連携もパスを中心に動いている。

パスには時系列表示のものと、必要時に発行される医療情報提供書に代表されるサマリー型のパスがある。


  4. 実地医科のスキルアップ

実地医科の医師が必ずしも内科医ではない場合もある、また同じ内科でも専門が糖尿病やその周辺疾患で有るとは限らない。そのために糖尿病に関するスキルアップは必用である。糖尿病の医療連携を行う上で糖尿病に関する講演会、セミナー等の場を作っていくことも必用である。


  5. 顔の見えるネットワーク

医療連携は一人の患者を複数の医師あるいは、複数の施設で切れ目なく診療していくための手段でもある。紹介元の医師は自分の患者を紹介先の医師に託すのであるから、相手先の医師を知っていることは患者側からしても安心なことである。人を託す相手を互いに知ること、すなわち顔の見える連携は連携の絆を深めるとともに間者の信頼感を得ることにもなる。HADNeTはその例として取り上げられている。

< 新着情報一覧

最新のニュース

年を選んで検索する